ビジネスの世界には「5S活動」という有名な取組みがあります。
整理・整頓・清掃・清潔・躾の5項目を徹底させる活動のことです。
トヨタを起源に多くの企業で取り組まれ、製品やサービスの改善に成果を上げていると言われています。
また、心理学や脳科学の研究では、すっきり整った部屋は人生に計り知れない影響をあたえることも分かっています。
そこで、片付けが持っている力とその実践の方法についてまとめます。
片付けのメリット
片付けが苦手な人に共通するのがモノを捨てられないこと。
捨てたら後悔するんじゃないか、損をするんじゃないか、という気持ちが、多くの人の邪魔をします。
損失回避の法則とも言われ、人は得するより損することの方をずっと気にしてしまうという性質を持っているからです。
でも、大丈夫。実は、この性質は逆に利用することができます。
それには、まずは片付けのメリットをしっかり押えること。
片付けが持つ力を理解することで、無駄なモノは捨てない方がずっと損だと分かります。
捨てることへの見方が変わって、きっと、片づけたくてたまらなくなるはずです。
また、メリットをよく意識して、関心を寄せることで、より確かで多くの片付けの効果を引き出せるはずです。
それでは、まさか!とも思える片付けの具体的なメリットを見ていきましょう。
倫理観が高まる
整った空間は、私たちの倫理観を高めてくれます。
アメリカ犯罪学発の理論では、次のように語られます。
「建物の窓が割れている状況は、犯罪に配慮していない場所という意識を増長させ、犯罪発生率を増加させる。」
ブロークンウィンドウと呼ばれるこの理論には、たくさんの活用事例があります。
例えば、ディズニーランドでは、小さな傷や汚れを見逃さず、徹底した修繕・清掃を行っています。
これにより、従業員やパークに訪れる人々のマナーは向上したと言われています。
他にも、ニューヨークでは地下鉄の落書きを消したことで犯罪が半減したり、崩壊状態だったある中学では、保護者たちがゴミを片付け、落書きを消したところ、生徒たちは落ち着きを取り戻したと言われています。
片付けには、人の心に倫理を促す作用があるのです。
お金が増える
冒頭で取り上げた5S活動ですが、この目的は、商品やサービスの品質・コスト・納期の改善です。
ここで、改めてこの5Sの効果について触れます。
・不用品を「整理」すると作業スペースが広がり、労働環境が改善されて、生産効率が上がります。
・材料や工具や書類などの置き場所をしっかり決めて「整頓」しておけば、必要なものを探す時間が無くなります。
・ゴミや汚れをすみずみまで取り除く「清掃」は、道具や設備などの異常を気づかせてくれます。
・整理・整頓・清掃をキープして、汚れを出さない方法を工夫することが「清潔」。
・整理・整頓・清掃・清潔を習慣にするのが「躾」です。
5Sで自分の環境を整えられる人は、行動の質が高く、コストを抑えて、仕事が早い。できる人、信頼されて、稼げる人です。
同様に、暮らしの場面でも、質の高い生活を、不必要な出費を抑え、時間にゆとりをもって送ることができるでしょう。
片付けは、仕事にも生活にも、高い付加価値を与え、お金を増やしてくれるのです。
悩みが減る
仏教ではすべての悩みは執着が原因と言われます。
執着とは必要の無い物事を必要と感じてしまう錯覚のこと。
例えば、終わった恋を引きずるのは分かりやすい執着です。
生まれや容姿や学歴に酷く劣等感をもつのも執着でしょう。
現実への不満も、過去への悔やみも、先行きへの不安も、それらは必要でしょうか?
もし、元気を奪うだけならば、すべて不要なものを必要と感じている錯覚です。
では、この厄介な執着を手放すにはどうすればいいか?
それがモノを捨てることです。
「捨てて大丈夫だった!」「必要と思い込んでただけだった!」「捨てたらスッキリ気分が上がった!」など、不要なモノを捨てることでこの感覚が養われます。
モノを捨てることで執着心が外れていく。
心が軽くなって自由を感じて前を向ける。
悩みに”片を付けられる”ようになるのも、”片付け”の効果です。
モチベーションがあがる
身の回りがスッキリと片付いていると、ストレスも少なく、頭もクリアに働き、やる気も沸いてきます。
やる気が起きず片づけられない、という感覚を多くの人が経験しますが、実はこれは因果が逆。
やる気がでないから片付けられないのではなく、片付いていないからやる気が起きないのです。
Psychologies Magazine(2013.01)ではこんなことも語られています。
「整理する、捨てる、選ぶ。片づけは、多くの場合、不安や無力に対する最善の防御手段である。」
片付けには、モチベーションを高め、低下を防ぐ効果があるという訳です。
片付けの実践
メリットをしっかり押さえたら、早速、片付けましょう。
世間で言われる片付けの実践法は様々です。前述の5Sもその一例です。
ここではできるだけシンプルに、捨てる・整理する・習慣にする、この3ステップで考えます。
捨て方
ミニマリスト達は、必要最低限のモノしか持ちません。つまり、必要最低限の範囲かどうかにモノを手放す基準をおいています。
このように、片付けられるようになるには、捨てる基準を決めてこれに従うことです。
捨てる基準のアイデアをいくつか挙げてみます。
・一定期間使わなかったものは捨てる。
・思い出が詰まった品々は画像データに残して捨てる。
・全てのモノを一旦売り払ったとして、それを買い戻すかどうか?を基準にする。
捨て方の基準は、自分の性格と生活にあったものを見つけることが大切です。
私自身の今使っている捨てる基準は次の通りです。
・カテゴリーごとに収納スペースを割り振って、その中が整然さを失ったら、必要度の低いものから順に捨てる。
この方法は、捨てることと整理することを同時にこなせてしまうのがいいところです。
整理の仕方
捨てることで必要なものだけになったら、次に、それらの配置を整えます。
この時、インテリア性の低いものは、極力オープンスペースに置かないことをおススメします。
観葉植物や間接照明やアートをレイアウトしてみるのはどうでしょう?
せっかくですから、空間の感度の良さを追求しましょう。
これで片付けはもっと楽しくなります。
もちろん、収納スペースの中も、使いやすさ、キレイさを行き届かせてください。
モノをキレイに使いやすく配置するには、持ちモノの色、デザイン、素材などに統一感を持たせること。
配置には動線を考慮すること。
収納スペースには余裕を、モノのレイアウトでは余白を持たせるのがポイントです。
習慣の作り方
キレイで使いやすくしたその状態へ、1日1回は戻す。
毎日の掃除のタイミングを決めたり、夜眠る前、朝外出する前など、気持ちがいいと思えるタイミングで、どこかで1回、キレイな状態に戻すことを習慣にすれば、例え、一時的に散らかしても、大ごとにはならないでしょう。
ワンインワンアウト、ひとつ買ったらひとつ捨てる、という習慣も、モノを増やさず、持ち物のいいモノレベル、お気に入りレベルを高めてくれそうです。
また、いい香りが香ると、人は部屋を散らかさない、キレイな状態を保ちたいという心理が自動的に働くことが分かっています。
インテリア性の高いディフューザー等をひとつ置けば、いい香りがして、見た目の印象も上がって、そして、片付く、といういいことづくめです。
まとめ
片付けを実践すると、倫理観が高まり、お金が増え、悩みが減り、モチベーションが上がることが数々の知見から分かります。
生活の環境を、自分の意志で、自分の行動と感性に合わせて高めていくわけですから、その影響力の大きさは当然なのかもしれません。
実践は至ってシンプル。捨てる・整理する、そしてこれを習慣にすることです。
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