現代人の不安と実証された解消法

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不安というものを
感じない人はいないと思います。

そして、これが過度になり過ぎて、
日常生活に影響をきたすとなると
それは不安障害という病になります。

世界44か国で不安障害発症率は3人に1人。
日本の不安障害の患者は15年で2倍に増加。
と言いますから恐ろしい。

ところで、

この不安障害の患者数ですが、
各国の近代化レベルに対応しています。

不安障害の患者数は、ほぼ
各国の近代化レベルに比例して増加いた。
というのは、2017年WHOの調査からの報告です。

また、2013年インド国立
生命科学研究センターの調査から、
不安は人へこんな影響を与えることが
分かってきました。

・記憶力の低下
・理性的な判断力を奪う
・死期を早める

なんと恐ろしい。

では、何故、人は不安になるのでしょう?
また、不安は解消できるのでしょうか?

この記事では、この問いに答えます。

参考文献はこちら。

では、進めます。

「最高の体調」不安篇

肥満も不眠も「文明病」
現代の多くの体調不良が
たったひとつの原因に
よるものである!

それは「炎症」です。

だるさ、集中力散漫、鬱などもすべて、
体の炎症が引き起こしています。

という

驚きの事実を明かしたのが
鈴木裕著「最高の体調」です。

炎症は、
人類が長らく暮らした
狩猟採集生活と今を照らし合わせると、
この問題点が見えてくる。

この具体的な対処法も含め詳しくは
ひとつ前の記事で要約をしています。

僕たちは「最高の体調」を取り戻せる!
こんにちは、管理人です。僕は普段ヘルスケア関連の仕事を中心にしていますが、最近、ヘルスケアに関するとても興味深い名著に巡り合いました。最高の体調 ACTIVE HEALTH✓最近何となく体調がすぐれない✓目の前のことに...

そして、

炎症と並ぶもうひとつの文明病、
それが今回のテーマ「不安」です。

やはり、こちらも人類が長らく暮らした
狩猟採集生活と今を照らし合わせると、
改善策が浮かび上がって見えてくるのです。

文明病としての「不安」

不安の役割

なぜ、人は不安になるのでしょう?

不安は本来、原始の時代に備わった
危険な動植物が物陰に潜んでいるよ!
という危機を知らせるアラームでした。

しかし、現代は危機感の質が
すっかり変わってしまったため
この機能が誤作動を起こしているというのが
本書の主張です。

現代の不安の原因

現代人は、遠い未来を抱えています。
狩猟採集民にはこれがありませんでした。

毎日、同じ時間に起きて、
狩りに出かけて、
獲物を仲間と分かち合い、
歌って踊り、
毎日、同じ時間に眠る。

ひとことで言えばノープラン、
その日暮らし。
確かに遠い未来という概念が
不要なのも頷けます。

何十万年も続いたこの
その日暮らしが一転したのは、
農業のはじまりでした。

定期的な食糧を得たことで、
人類はノープランでは
居られなくなりました。

農業が時間感覚を変化させ、
遠い未来を持つようになると、
ぼんやりとした不安を抱える様に
なりました。

危険な動植物がいるかも?
という今ここだけの
はっきりとした不安から、
何が起こるかわからない…
という遠い未来の
ぼんやりとした不安へと
変わっていってしまいました。

「価値」対策

今から狩猟採集生活に戻れるのなら、
こうしたぼんやりとした不安からも
解放されるのかもしれません。

しかし、今さらは無理です。

そこで本書は、この不安の
取り扱い方について深く考えた
4つの提案をしています。

最初の提案は「価値」への対策です。

価値観とは?

あなたはどんな価値観で生きていますか?
もし、はっきり言葉にできないとしたら、
こんな質問に答えてみてください。。

「もしすでに使いきれないほどの金を手に入れ、理想の仕事につき、毎日が幸福感で満ち溢れていて、誰からも尊敬されていたとしたら、私はどのように行動するだろうか?自分や他者とのかかわり方はどう変わるだろうか?」

金が欲しい、幸福になりたい、尊敬されたい…
のように何を求めているのか、ではなく。
どのように生きたいのか?
それが価値です。

「価値」と「目標」の違い

「価値」と「目標」の違いを考えると
分かりやすいかもしれません。

・目標は、未来に達成すべきゴール
・価値は、つねに現在のプロセス

・「クリエイティブな仕事につく」は目標
・「クリエイティブな人間でいる」なら価値

・「結婚する」は目標
・「好きな人と楽しく暮らす」なら価値

・「弁護士になる」は目標
・「弱い人を助ける」なら価値

価値に基づく行為は、
時間の心理的距離を”いまここ”に収束させて、
未来への不安を消し去ります。

多くの人が持つ一般的な価値観

ミシガン州立大学の調査では、
人間は次の4つの価値観に
幸福を感じやすいと分析したそうです。

➊自治
どれだけ人生を自由にコントロールできるかどうか
➋多様性
仕事や人間関係に多彩さがあること
❸困難
人生のタスクに適度な難しさがあること
❹貢献
他者の役に立っているかどうか

中でも影響力が大きいのは貢献だそう。

だから、

もし、未来の選択に不安を感じたら
「誰かの役に立つ行動はなにか?」を
考えてみてください。

その瞬間にあいまいだった未来は
「いまここ」に収束し不安が
情熱に変わります。

価値観に添った行動を取る限り、
あなたの未来に失敗はない。

と、本書は提案しています。

本書では、自分の価値観を分析するための
いくつかのツールを紹介しています。
ミシシッピ大学やケンブリッジ大学
という名門が考案したいずれも、
信頼性の高いものです。

自分の価値について、
詳しく知りたいたい方は是非、
本書で紹介されているツールを
試してみてください。

「死」への対策

不安のトリセツ、二つ目は
「死」の対策です。

現代人は、いつ訪れるかもわからない
「遠い死の予感」に
無意識の不安を募らせています。

狩猟採集民のソリューション

では、狩猟採集民は?というと

狩猟採集社会には「生まれ変わり」の
観念がありました。

生と死は巡回を続ける事象であると信じられ、
これで死の不安を解消していたと
考えられます。

ブッダの究極ソリューション

ブッダも、不安の解消に挑んだ人でした。
彼のソリューションは…

・欲望も自分もフィクションである
・環境とのやりとりに生じる自然現象なだけ
・なにも変化しない自分絶対的な自己などない

だから、

執着なんて捨てちゃえばいいじゃん。
というものでした。

意識高すぎ、難易度MAXです。

本書のソリューション

生まれ変わりを信じることも
出家することもできない現代人が
不安にどう抗えばいいのか?

それは、

畏敬の念を持つことと、
自己観察をすることです。

これは狩猟採集民の考え方と
ブッダのソリューションを
ミックスさせるアイデアです。

「畏敬」とは、

自分の理解を超えるような対象に触れ、
湧き上がる鳥肌が立つような感情、
それが畏敬です。

実際に、この感情を感じた人は
感じない人と比較して、
次のような変化が起きるという
研究結果があります。

・人生の満足度があがる
・チャリティなどへ寄付を行う気持ちの増加
・仕事に使える時間が増えた気がする
・親切な行いが多くなる
・目の前の欲望にも強い

また、次のような報告もあります。

・「畏敬」を感じた回数が多い人ほど
 心理的な不安や体内の炎症レベルが低かった

ただならぬ効用です。では、

畏敬の念はどのようなことで
持つことができるのでしょうか?
本書では、次の3つを紹介しています。

①自然に触れる
私たちを壮大な生命システムの
一部だと再認識させる

②アートを観る
音楽、映画、絵画、演劇など
高度な創作性は人間を超えたかのような
感覚をあたえる

③偉人について知る
歴史上の偉人、スポーツ選手、
タレント、政治家など
偉業や徳性は永遠と一体化した感覚を育てる

「自己観察」について

ジョンズ・ホプキンス大学の分析によれば、
マインドフルネス瞑想を実践すれば、
不安、鬱、慢性痛がほぼ確実に減るそうです。

マインドフルネスとは、

・その時の感情を自覚している
・いまの状況に集中できる
・つねに自覚的に作業を行う

という自己観察の総称です。

よく言われる瞑想とは
このひとつの手段です。

だから例えば、

雑巾がけ、歯磨き、炊事、洗濯など
すべての家事をマインドフルに
行うだけでも不安は減っていくでしょう。

つまり、

無意識の不安を募らせないためにも
畏敬の念を抱かせるものに触れ、
時々自分を観察者のモードに切り替えて!
というのが著者のメッセージです。

「遊び」対策

最後の不安対策は「遊び」です。

原始社会で日々の仕事は「遊び」でした。
人々は幼少期から徹底的に「ゲーム感覚」が
叩き込まれました。

彼らは、遊びのために生きるのではなく
生きることそのものが遊びでした。

鳥や虫や魚や他の
自然界の動物たちを見れば
そのことはなんとなく
想像がつきます。

彼らは楽しそうに動き
遊び回る中で食糧を
得ているように見えます。

人間という生き物だけが、
ご飯を食べるため辛そうに
労働をするのはそもそも不思議です。

現代の生活に「遊び」感覚が減った理由

では、何故現代社会に「遊び」感覚が
亡くなったのでしょうか。

その答えは、現代社会のルールと
フィードバックにあります。

ルール

狩猟採集社会はルールがシンプルでした。
決まった時間に狩りに出向き、
獲物を仕留め、仲間と分かち合い、
あとはみんなで歌って踊る。

一方、現代社会は社会システムが変わる
そのたびにルールが変更されていきます。
これをキャッチアップするだけでも一苦労。

確かにルールがモヤっとした遊びほど、
モチベーションを下げるものはありません。

フィードバック

狩猟採集社会は
フィードバックが早かったそう。

獲物が手に入るかすぐ分かり
弓矢を作ればすぐ性能を試せて
建材を組めば半日で住居ができあがる
自分の仮説の妥当性が
すぐ検証されていたのです。

仮説の妥当性の即時、検証…、なるほど。

一方、現代社会では、
今ここのことが二の次になり
遠い未来のぼんやりとした不安を
解消するための行動が増えました。

いい学校に入れなかったらどうしよう…
就職できなかったらどうしよう…
会社を首になったらどうしよう…
ああ、不安… 努力しよ…
とかですかね。

だから、ひとつのことが形になるのに
時間がかかります。
つまり、現代社会は遊び場としては
粗悪品というわけです。

ルール化

本書では、
人生を遊び場にするための
いくつかのルールを
提案しています。

どのルールも、
ぼんやり遠く離れた未来を
切り刻んで、今ここに
収束するためのルールであり、
どれも効果が実証されている
ルールです。

中でももっともシンプルなものが
「3つのルール」です。

実践方法はこんなカンジ。

・今日やりとげたいことを
 毎朝3つ書き出して実践

・今週やりとげたいことを
 週の頭に3つ書き出して実践

・今月やりとげたいことを
 月初めに3つ書き出して実践

・今年やりとげたいことを
 年始に3つ書き出して実践

・毎週末にレビューを行い、
 うまく行った点を3つ、
 改善できる点を3つ書き出す。

なにやらちょっとダルいですが、
ハマれば効きそうな気はします。

これはソフトウエアの世界の
アジャイル開発という分野で
生まれた技法なんですって。

フィードバック

人間の脳はフィードバックに
飢えています。例えば、

・学校のラジオ体操でもらった出席シール
・TODOリストのチェックマーク
・釈放までの数日を独房に刻む囚人

ゴールまでの進行度で
数が増えていくものならば、
なんでも快楽を得られるように
できているんだそうです。

なるほど、分かる。

もっともシンプルで手軽な
フィードバックとして、
カレンダーでのトラッキング
著者は推していました。

そのプロジェクトを達成したら
カレンダーに○印をつけるだけ。
原始的ながら効果は高いそうです。

人類は大人になっても
遊ぶ必要があります。

これにも様々な手法が紹介されていますが、
結局、遊び化のためのポイントは3つ。

・価値にもとづいたプロジェクトを組む
・ルールで未来を刻む
・自分にフィードバックを

これで人生に遊びの感覚を取り戻し、
遠くなった未来が現在に近づきます。

おしまいに

価値観に基づいて生きることは
見逃しがちですが人生の指針です。

本書が紹介したミシガン州立大学の
調査で言うところの、自治と貢献が、
僕の価値観の大きいところです。

しかし、この調査の他の項目、
多様性、そして、困難。
これについて改めて考えさせられました。
確かにこういうこともあるなぁ…と。

特に困難。

人は人生のタスクへの
適当な難しさを必要としている。。
確かにそうです。

簡単すぎてクリアしかしないゲームが
面白いはずがありません。

「人生は暇潰し」と言った人がいますが、
簡単すぎる人生では暇が潰せません。

なんか大事だと思ったので、
僕はこの価値観においての困難を
「楽な苦難」と呼ぶことにしました。
苦しすぎない難しさ、楽しい困難、
人生には、楽な苦難が必要です。

ラクナクナン。
語呂がかわいい(笑)

楽は苦の種、苦は楽の種。

とか言いますが、
種でなく困難そのものが
もう価値でした。

人生に楽な苦難をブレンドして
未来を刻み仮説がすぐ検証できる
マイルールをつくって、
生きることを楽しい遊びにできたらいいな。
そんな風に思いました。

あなたも是非、
人生を遊んでくださいね。

では、また。

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