「ネコに学ぶほど、ヒトは幸せに生きられる」という主旨の本の要約です。
都会では組織や他人に囲い込まれ、田舎では古き伝統と習慣というある種の「不自由な束縛」の中で、ネコは私たちの心を、自然体に戻してくれるのかもしれないのです。
本書コンセプト:
- ネコの生き方のヒントを学ぶ、自己啓発ならぬ「ネコ啓発」ともいえる取組みです。
- ネコとヒトのお話を同時に進めていく、新しい挑戦をしています。
- ネコから癒しを楽ラクと学びながら、自分を成長させてしまう欲張りな一冊。
- これ以上、苦労をし続けない、少しラクに生きられる、突き抜けた結果を出せる、ネコ的人生の指南本です。
著者について:
著者は、ペットフードの開発のため、海外で研究をしている、食事療法や栄養療法を行う「栄養」が専門の獣医の宿何章さん。
アドラー心理学の資格も持っていて、理学的なアプローチと栄養学的なアプローチの両方を使って、トップアスリートの栄養指導を、心のケアを含めて行いました。
この独特の経歴から、アドラー心理学でいわれる「ヒトがよりよく生きるための考え方」と、「ネコの生き方」に共通点を見つけています。
理解されない辛さに苦んだら
忘れないで、多様性のこと
ネコは一匹一匹の違いがとても大きい動物です。遺伝的に多様で、それぞれ「まるで違う」ため、ネコの飼い方は、なかなかマニュアル化できません。
例えば、ネコの指は前足に5本、後ろ足に4本が基本です。しかし、指が4本でも5本でもない子の当たり前のように出会います。6本、ときには7本の子も珍しくない、それがネコの普通です。
個体ごとの差が激しいネコですから、あなたの飼っているネコをよく見て、よく知ってあげることを心掛けてください。
ネコのことについては、獣医さんより、一緒にいる飼い主の方がずっと詳しいのです。
パートナーの個性と魅力は何だろう?
一匹一匹違うから、それぞれの個性を尊重して欲しいのですが、実はこれは、当たり前に、私たちヒトにも言えます。
コミュニケーションの本も、子育ての本でも、専門家の話はぜんぜんあてはならないことが珍しくありません。
ネコもヒトも、個性的で魅力にあふれているので、本当の意味で理解をするのは難しいのです。
理解されないと悩む前に、あなたのネコさんを、そして周りの人を、理解することから始めてください。
それぞれの違い、それは、個性と魅力を認めることです。
期待に応えられないときの人付き合いのコツ
自分の自由を称えよう
もしも、社交的であることに疲れたら、アドラー心理学の影響を受けたカウンセリング学派が大切にする次の2つを思い出してください。
- 周囲に合わせすぎず「自由な自分」をゆるすこと
- 自分自身への批判、自己叱咤をゆるめ、自分を褒めてあげること
例えば、ネコはよくこんな風に振舞います。
家の近所で先週一度だけ会ったネコに今週また会いました。先週は近づいてきてくれて、撫でさせてくれたのに、今日は知らんぷりです。
ネコは記憶力のいい動物で、たった一度会っただけのヒトでも1週間程度はラクラク覚えています。
わたしたちならこんなとき、ともすると本当は嬉しくないのに喜んで見せたして、なんだか辛くなります。
他人ばかりを重視してしまう人生は、心理学では「共依存」というやや不健全な関係と考えます。
ツンデレ・コミュニケーション
そういう場合は、ネコになった気持ちで「本当は、自分はどうしたいのか」自分の内面からやりたいことを引き出してみてください。こういった技法をアドラーは「自己勇気づけ」と呼びました。
ツンデレ対応でも、ことさら他人を傷つけません。むしろ、好感度ギャップがあります。まずは、自分を害さなことです。
対人関係の悩みを解消しよう
空気を裏切る勇気
ネコはわがままで空気が読めないと思われがちですが、それは誤解です。実は、ネコは空気をあえて裏切っています。
そんな気配は微塵も感じさせませんが、ネコは人間の言ったことはほとんどわかっています。だけど、マイペース、マイルール。気づかない振りからの敢えての無視です。これは、自分の思考や行動を相手に悟らせないことがネコの習性があるからです。
ネコ科の動物は狩りで、まるで獲物に気づかない振りをします。相手がどう動くのかはよく分っています。相手を思い通りに動かせて、急に飛びかかります。こんな狩りを得意とします。空気を裏切るクセはここからきています。
空気を読まない勇気
これに比べると、人間の相手の気持ちを汲み取る力、空気を読む力は、まだまだ発達途中です。だからこそ、人間関係のトラブルがあるとこの力の無さに落ち込みます。
でもここは、種としての苦手分野で努力目標です。相手の気持ちが分からないこと、自分の気持ちを分かってもらえないことに完璧を求めないでください。健全な心を保つためにも、私たちには、空気を読まない勇気が必要です。
ルールを守らない人にイラっとする時の心得
多様性を欠くと弱くなる
ルールやマナーは、人間がお互いを尊重し合い、物事をスムーズに進めていくためには不可欠です。ルールを徹底してそれを守ることで効率もグンと上がります。
でも、実はこれ、いいことばかりではありません。画一的になり過ぎて、多様性を無視するとリスクがあります。
例えば、オーストラリアのタスマニアデビル、アメリカのバッファロー、中国のパンダ等、一度1000個体ほどに数が減った種がいます。保護活動で個体数は戻せますが、遺伝的な多様性は失われたままです。その結果、絶滅のリスクは高まり、元の100倍以上です。
違うものが要る
これは人の社会生活でも同じことが言えます。全員が同じテンションで同じ方向へ疾走している組織は危険です。一時的に業績が伸びても、世の中の変化やトレンドから取り残されます。
ルールや方針は必要ですが、これに従わないヒトがいることもまた、組織が発展していくため許容は必要です。
愛を感じる行動
黙って寄せる愛が沁みる
ネコは究極のツンデレです。飼い主に対して持っている強い愛情を隠すように行動します。次のエピソードは、著者の体験談です。
息子が幼いの頃、玄関先に遊びに出たがると必ず、飼いネコ「マオ」は一緒に外へ出ていきました。
一緒に遊ぶわけでもなく、ただ、塀の上に登って息子をじっと眺めていました。そして、息子が遊び終わると一緒に帰ってきました。
だれかに襲われることがないかただただ見張ったのです。そして、その見守りは、息子が高校生になるまで続きました。
愛情の深さがしみいります。
これは人間社会を考えるうえでも、とても参考になります。
例えば、見知らぬお母さんが、階段で重そうにベビーカーを持ち上げている時、「お手伝いしましょうか」と声をかける人がいるのは素晴らしいことです。
それとは別に、それをそっと見守り、無事を祈る人がそばにいたら、そちらも沁みる情景です。
上下関係は嫌いな人必読
フラットな関係をクールに結ぶ
クールと思われがちなネコですが、それは実は違います。母と子の間はとても仲睦まじい関係です。
ネコの関係は、共同体も持っていますし、愛情も深いのですが、リーダーは不在でフラットで対等です。
ヒトがこれまで飼育してきた様々な動物との関係は、リーダーと群れでした。ここがネコとの違いです。
ネコはクールという誤解は、人間の理解が上下関係という枠を超えたときに消えていくのかもしれません。縦の関係を否定したアドラーの世界とネコの生き方は、はからずして酷似しています。
人見知りを克服するには?
会ったぶんだけ仲良くなれる
ネコに近づいていくと、途中でネコが一瞬フリーズするタイミングがあります。ピクッとなる瞬間です。その距離感が、ネコにとって非常に大事な「パーソナルスペース」です。
ネコ同士が相手に心を許すとき、鼻と鼻を併せる習性があります。ネコと仲良くなるには、ネコが一瞬フリーズするところで近づくのをやめ、しゃがんでネコと目線を合わせます。そして、ネコに向かって、軽く人差し指を伸ばしてみましょう。
ネコが自分からあなたに近づいて、鼻で「チョン」としてくれたら、それはお友達のサインです。ずっと仲良しでいられます。
最初受けいれてくれなかった子も、ネコの流儀を守って回数を重ねていれば「この人いい人かも?」と思い直して「チョン」としてくれるかもしれません。顔を合わせた
回数だけ親しくなるのは、ネコも人も同じです。
いい目線いい距離感
ネコの距離感から、私たちは学ぶべき事がたくさんあります。
あなたが親しくなりたい相手でも、相手が乗り気でなければ、無理はしないことです。相手が自分の距離感を侵そうとしたら、それを防ぐことも大切です。
また、上から目線は禁止です。距離感の心地よさは人間関係の心地よさです。末永くよい関係をつづけていくためにも、適度な距離感を保つことが何より大切です。
劣等感に苦しまないで
劣等感は、もとより前向きなもの
自分には才能がない、学歴がない、かわいくない、そんな理由で何かをあきらめていたら、それは「劣等コンプレックス」のワナにはまっています。
劣等感を成長の糧にするか、それともあきらめの言い訳にするのか、選ぶのはあなたです。
劣等感なんてチャームポイントだ
鼻を「チョン」と合わせるネコの挨拶は、心を許した相手にしかしない行為です。ネコの目は、大きくもろいものです。ちょっと傷がついただけでも水晶体などが痛んで見えなくなります。
目が見えなければ、狩りができなくなり生命の危機に繋がります。ネコの挨拶は、お互いの弱いところを相手の前にさらけ出す信頼のサインなのです。
私たちはつい、完璧であると愛されると考えてしまいます。しかし、実はそうでもありません。周囲から愛されているヒトは、意外に欠点が多く、完全無欠なヒトはかえって不人気です。
欠点はチャームポイントともいえます。完璧を目指すより、完璧でないと知った上で、それを乗り越えていくことの方が大切です。
他人の期待が重いとき
相手と自分、それぞれの課題は別のモノ
私たちは「分離して考える」(=比較抜きに、物事をありのままに捉える)ことが苦手です。
「私が仕事を休んだら、Aさんに嫌われるかもしれない」
「新しい仕事にチャレンジしたら、Bさんに嫉妬されるかもしれない」
Aさんがあなたを嫌うかどうか、Bさんが嫉妬するかどうかはわかりません。また、仮にそうだとしても、それらはAさんやBさんの課題であり、あなたに関係がありません。
ここでのあなたの課題は、自分の体調を知り休むという選択をすること。望んでいた新しい仕事にチャレンジすることです。他人の課題に振り回されて、自分の課題を見失わないでください。
ネコとイヌを同列で語れないのと同じに、あなたと他人も同列では語れません。自分の課題と他人の課題は分離して考えます。
大切なのは、自分の肉体的、心理的、脳神経的な特徴を知ってあげることです。他人にとっていいことが自分にとってもいいとは限りません。
それは、健康法にも、働き方にも、食事にも、人間関係にも言えることです。忘れないでください。
マイナス思考を直すには?
自分に勇気をさずける
ネコのぐうたらは、体の構造以外にも大事な役割があります。実はネコがゴロンとしているときは、体の悪い部分を直していると考えられています。
さらに、ネコが寝転んで「ゴロゴロ~」と喉を鳴らすのは、振動を使って体の調整をしていることがわかってきています。
また、体を健康的に維持するためだけでなく、骨折した部分の骨の付き具合をよくし、骨の免疫力を上げる等、積極的な治療にも「ゴロゴロ~」を活用しています。
そして、この「ゴロゴロ~」を自分のためだけでなく、飼い主のためにも使います。
病気のときにネコがそっと寄り添ってゴロゴロしてくれることがあります。もしも、ネコがあなたのそばでゴロゴロしてくれたら「つかれてるんじゃない?」「治してあげるよ」という気持ちの表れかもしれません。
ネコのゴロゴロ同様の人間がする行為があります。それは、ポジティブに自分を褒めているとき(自己勇気づけ)です。
オリンピックのメダリストが「自分で自分を褒めてあげたい」という有名なコメントを残していますが、この言葉が、自己勇気づけの典型です。
自己勇気づけには、とても大きな効果があります。アドラー心理学の入り口として、ここから始めてみることおすすめします。永続的に人生にいい効果が表れ、未来が好転します。
ニャドラーがすすめるアファメーション
- 先に進んでる!進んでる!!進んでる!!!(でも焦らない)
- すでに買ってる!すでに勝ってる!!すでに勝ってる!!!(でも負けても大丈夫)
- 順調!順調!!順調!!!
- 大丈夫!大丈夫!!大丈夫!!!
- いい感じ!いい感じ!!いい感じ!!!
- 圧倒的に有利!有利!!有利!!!
- チャンス!チャンス!!チャンス!!!
- ラッキー!ラッキー!!ラッキー!!!
- 自分でやる!自分でやる!!自分でやる!!!
- それでも満足!健全!!順調!!!
- 楽しく!楽しく!!楽しく!!!
- 幸せ!幸せ!!幸せ!!!
失敗ばかりで上手くいかないとき
目的が未来も過去さえも変える
アドラー心理学は原因論ではなく、目的論という立場をとっています。原因論とは、過去の失敗のために、現在にチャレンジできない姿勢を言います。
一方、原因を言い訳にして、リスクを避けていると考えれば、目的論の考え方になります。
「過去の失敗を生かして現在にチャレンジする」と言ったように、前向きな目的を持つことができれば、過去の失敗さえ、プラスに変化していきます。
爪あと残せば上々
狩りにおいて、失敗ばかりしているように見えるのが、ネコ科の動物たちです。ネコ科の動物たちは、失敗に対するある種のたくましさがあります。実は、彼らは一回一回の狩りに完璧は求めません。そして、単に失敗しているわけでもありません。
ネコ科の肉食動物のツメや歯には、相手を弱らせる効果があります。そのため、その場では逃げられても、爪や歯で残した傷が、後でひどく化膿して獲物を弱らせます。弱った獲物を次のチャンスに改めて仕留めます。
ですから、爪痕さえのこせれば、狩りの第一段階は成功なのです。
一見、失敗の見えることでも、得るものはあります。そんなことをネコたちは教えてくれています。
将来が不安になったらどうする?
ネコみたいに今を生きよう
ネコ科の動物は食物連鎖の上位に存在します。そのうえで大事なのは、獲物をとらえる瞬発力です。
ネコ科動物の筋肉は皆、白筋といわれる瞬発系の筋肉でできています。ネコがあきらめが早い、気まぐれなどと言われるのは、この筋肉の性質のためです。持久力がないのです。
一方、ヒトの体には、白い筋肉と赤い筋肉の両方があるといわれています。そして、鍛えていくことで、白い筋肉の能力と赤い筋肉の能力の両方を持ったピンク色の筋肉をつくれることがわかっています。
人は脳だけでなく筋肉も学習や努力により変えていけるという特性があるといえます。
それ故に、今、この瞬間を大切にすることよりも、未来へと心が引っ張られてしまうことがあるのかもしれません。
それがプラスに働けばいいのですが、マイナスの未来の想像にとらわれてばかりいたら、もったいないことです。
未来は、今、つくられる。不安になったら、今を生きるネコの生き方を思い出してください。
人生で大切なものは何か?
なにより尊厳と愛情。
多くのネコが大事にしているのは、次の2つです。
- 自分の尊厳
ネコ科動物の尊厳・高貴さは、恐竜の絶滅後、恐鳥類を制して地上の覇者として過ごした3000万年の間に培われた種としての特徴です。 - 愛情
ネコは、家族と自分が認めた相手に対しては、非常に深い愛情を注ぎ、また愛を求めます。
これらの2つは、自分の命と比べても負けないほど、ネコにとっては大事なものです。
著者は、飼い主さんから、難治性の病気について相談を受けた場合、化学療法や手術よりも、残された時間をなるべく一緒に過ごすことを大事にした方がいいのではないかと伝えています。
大好きな飼い主さんと一緒に過ごせる尊厳ある時間を守ってあげてほしいという気持ちです。
ネコが最後まで、ネコとしての生を全うするため、「大好きだよ」「ありがとう」を伝える時間を持つことを考えて欲しいのです。
とろこで、ネコにとっての大事な2つは、多くのヒトにとっても大事なことです。本当につらいとき、信頼できるヒトがそばにいれば、あるいは愛するネコがそばにいれば、それだけで少し、心の重荷が軽くなります。
今、少しヒトにとって、社会的なもの、経済的なものが、大きくなり過ぎている気がします。
おしまいに
ネコってアドラーなのか?それとも、アドラーってネコだったのか?と思いました。今日からネコを尊敬します。
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