アドラー心理学とは何か?魅力をかんたんに分かりやすく解説

ARGUMENT

「今更だけど、アドラーって誰?アドラー心理学って何?」
「本が売れたヤツですよね、ざっくりでいいんで中身が知りたい。」

という方々へ向け、アドラー心理学の有益性をざっくり5分程度で読める、できるだけ分かりやすい記事をまとめたと思います。

ポイントは以下3点です。

  • アドラーは自己啓発の父なのだ
  • 劣等感を克服させ人を社会との調和へと導く人です
  • アドラーが繰り出す大ワザ小ワザの数々ご紹介

では、始めます。

元祖・アルフレッド・アドラー

オーストリアのウィーン郊外で生まれたアルフレッド・アドラー(1870年~1937年)。

ジークムント・フロイト(1856年~1939年)や、カール・グスタフ・ユング(1875年~1961年)とともに三大巨頭として並び称される心理学者です。

このアルフレッド・アドラーは、元祖・人間性心理学、元祖・自己啓発の心理学者と言えます。

アドラーに影響を受け発展した人間心理学

アドラー心理学は「人間性心理学の源流」と呼ばれています。

「人間性心理学」とは、人間がより健康に生き、成長していくためには何が必要なのかといったことを探求していく心理学で、提唱者は「自己実現論」のアブラハム・マズローです。

アドラーはこの人間性心理学が提唱されるよりずっと前の世代ですが、アドラーに影響を受けた心理学者は数知れず、この立場の先駆者として位置付けられています。

人間性心理学の学者には、アブラハム・マズローの他、ヴィクトール・フランクル、カール・ロジャース、アルバート・エリス、アーロン・ベック、エリック・バーン、エーリッヒ・フロム、ウイリアム・グラッサー等がいます。

これらの研究者たちに共通する考え方としては、人間は主体的に決断し、自らの生き方を決めていく存在であると見なしていることが挙げられます。

アドラーは「自己啓発の父」とも呼ばれています

また、アドラーは「自己啓発の父」とも呼ばれています。いまやビジネス書の古典であり定番ともいえる、ディール・カーネギーの「人を動かく」「道は開ける」や、スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」などには、その理論の多くにアドラー心理学と非常に近い考え方路見て取ることができます。

また、コーチングやNLPの多くにも、アドラー心理学の影響が強く見られます。

劣等感を克服させ人を社会との調和へと導く

アドラーの考える劣等感

劣等感という言葉を現在使われている意味で最初に持ち出したのがアドラーだと言われます。

アドラーは、「人間であるという事は、劣等感を持つということである」といい、劣等感が人間の成長の糧であると考えました。

人は皆”赤ん坊~子供時代”を通じて弱者としての時期を過ごし、自分自身と周囲の大人とを比較する中で、人は劣等感を持つようになります。

また、人は常に今よりも向上しようという理想をを持つものですから、その意味でも、理想の自分と今の自分を比較した時の劣等性を常に感じているものだとも考えました。

そこで、人間はこの劣等感を解消するために、より成長したいと求め、自分自身を理想に近づけることができるのだと考えたのです。

つまり、劣等感とは人間の人格を形成する原動力になりえるというわけです。

フロイトとの対比

フロイトは、人間の人格形成において、『性的衝動(リビドー)』が、その基礎であると考えました。

一方のアドラーは、この「劣等感」を人間の人格形成の基礎だと考えたわけです。

この二人の心理学者は、精神科医として第一次世界大戦を経験します。

目の前で人と人とが憎しみ合い、殺し合う姿を目の当たりにし、この悲惨な現状を経験し、なぜこんなことが起こるのか?を考えました。そして、ふたりはそれぞれの結論に行きつきます。

フロイトは、この悲惨さ、これが人間の本来の姿、人間には「攻撃欲求」があるのだと考え、このような欲求がある(デズトルドー)と考えました。

一方の、アドラーは、これは、人間の本来の姿ではない、と考えました。人間は本来、みんな仲間なのだと信じていたそうです。

また、神経症等の症状には原因があるとした、フロイトの原因論に対して、アドラーは目的論を唱えました。

アドラーは、過去のトラウマを否定し、人は自分の経験にではなく、経験に自分が与えた後ろ向きな意味に苦しんでいるのだと、ちょっとトリッキーなことをいいました。

でも、それは、過去によりすべてが決まる原因論では、問題は何も解決しないと考えたからなのです。

アドラーは、常に問題解決により、人と社会の調和を考えていたことが最大の特徴です。

アドラーが繰り出すワザの数々

個人心理学

通常の心理学では、個人という存在を「意識と無意識」、「感情と思考」、「心と身体」のように構造的に分解し、分析を行います。

一方、アドラーは、「個人は分割できない全体である」、「個人という全体が、個々の要素(意識、無意識、感情、思考、心、身体)を協調させながら目的に向かって生きている」と考えていました。

アドラー自身は、自らの心理学の事を『アドラー心理学』ではなく、『個人心理学』と呼んでいたのはこのためです。

自己決定性

自己決定性とは…、人は自分の性格や価値基準を自分自身で決定している。たとえ、親や家族、教師の影響を受けたとしても、その影響をどのように意味づけ、どうするかを決めるのは自分である。環境は影響因でしかなく、決定因は常に自分にある…。そのような考え方です。

人は自分の人生を自分で決めてきた。だから、これからの人生も自分で決められる。

アドラーが「人は変われる。」と断言するのは、この中核概念によるものです。

場合によっては、この「自分が自分の運命の主人である」という考え方は、言い訳を許さず、厳しい考え方だと論評されます。

しかし、事実、アドラーは、この考え方で多くの患者さんの治療にあたり実績を残しました。

ライフスタイル

アドラー心理学では性格、気質、世界観、人生観まで含めて「ライフスタイル」と呼びます。

そして、このライフスタイルは、自己決定性から、自ら選んだものだと考えます。

もしも、今あなたが不幸だとしてもです。それは、あなたが自分の「ためになる」と言う意味で選んだものだといいます。

ちょっと残酷にも聞こえますが、だからこそ、自分の力で変われるのだ、という希望があります。

目的論

前述した「個人という全体が、個々の要素(意識、無意識、感情、思考、心、身体)を協調させながら目的に向かって生きている」という個人心理学の観点、

また、「環境は影響因でしかなく、決定因は常に自分にある」自己決定性の観点、

これらから、「人の行動や感情には目的がある」とアドラーはいいます。これを目的論と言います。

これは、フロイトの唱える「原因論」の否定です。アドラーは「トラウマ」を否定します。

過去の原因によって、人の未来がすべて決定するのであれば「トラウマ」に悩む患者さんは一生回復できません。しかし、実際は、そんなことはありません。

正の注目

アドラー心理学の『正の注目』は、『当たり前のこと』にも注目を与えます。

朝、会社に行く歯を磨く 時間内 に会社に着く。おはよう、と挨拶をする。素晴らしい ことです。すべて『 できている』ことだらけです。

人の行動の九十五パーセントは『できている』行動だそうです。しかし、私たちはたった五 パーセントの『できていない』行動ばかりに注目して、『できている』九十五パーセントを無視してしまいます。

それでは、エネルギーが湧くわけがない、という訳です。

これはあまりフィーチャーされないワザなのですが、実際自分を勇気づけるには、地味に効くので、個人的に好きなヤツです。

課題の分離

他者の課題に踏み込まない。それが課題の分離です。あらゆる人間関係のトラブルは、課題の分離がされていないことよって起きています。

それが誰の課題かを見分ける方法は、それを最終的に引き受けるのは誰か?で考えます。

これは決して、放任主義を推奨しているのではありません。見守ること、援助する用意があることを伝えることは重要です。

また、決して自己中心的になることでもありません。むしろ他者の課題に介入することこそ自己中心的です。他者はあなたの期待を満たすために生きているのではありません。

勇気

アドラーの言う勇気とは、「自分には他者に貢献する能力があり」「他者から必要とされる価値がある」という感覚です。

この二つが満たされることにより「困難を克服する力」となるといいます。

自己受容

自分の見方を変え、使い方を変えていく。60点の自分をそのまま受け入れ100点にするにはどうしたらいいかを考えること、これを自己受容と言います。

何が与えられているかについては変えることができません。与えられたものをどう使うかについては自分の力によって変えていくことができるわけです。交換不能なものを受けい入れるということをするわけです。

他者信頼

アドラー心理学では、対人関係の基礎は信用ではなくて信頼だといいます。

銀行でお金を借りるには担保が必要です。あなたが返済可能な分だけを貸す、これが信用です。つまり条件付で信じることです。

他者を信じるときに、一切条件をつけない状態で、もし、裏切られても信じ続ける態度のことを信頼といいます。相手に裏切られるかどうかは相手の問題です。もちろん、ここでも課題の分離です。

他者信頼で深い関係に踏み込む勇気を持てれば、対人関係の喜びは増し、人生の喜びも増えます。

他者貢献

他者貢献とは、仲間である他者に対して、なんらかの働きかけをしていくこと。貢献しようとすることです。

これは、自己犠牲してしまうこととは違います。自分を捨てて誰かに尽くすことではなく、むしろ自分の価値を実感するためにやることです。

自己受容できれば、裏切りを恐れることなく他者信頼できる。他者を無条件で信頼できてこそ、他者貢献できる。自己受容、他者信頼、他者貢献はプロセスの中でひとつにつながっています。

貢献感

人間にとって最大の不幸は、自分を好きになれないことです。これに対してアドラーは、「私は共同体にとって有益である」「わたしは誰かの役に立っている」という思いが、自分に価値があると実感さえてくれるのだと言いました。

他者貢献は目に見えないもので構いません。誰かの役に立っているという主観的な感覚があればいいのです。これが、すなわち貢献感です。

つまり、幸福とは、ただただ貢献感なのです。

承認欲求の否定

人が承認を求める理由は、自分に価値があると思いたいからです。つまり、欲しかったのは貢献感です。

しかし、承認で得られた貢献感には、自由がありません。無邪気でいられません。だから、課題を分離し、承認欲求を否定します。自己を受容し、他者を信頼して他者貢献によって貢献感を得るのです。

アドラーは、他者からの承認を求めることを否定します。承認を求めるのは多くは賞罰教育の影響です。われわれは他者の期待を満たすために生きているのではありません。

叱ってはいけない、ほめてもいけない

叱ること、褒めることの背後にあるのは操作です。操作は止めて、すべての対人関係を「横の関係」にすべきです。

横の関係での援助が「勇気づけ」です。能力がないのではなく、人は課題に立ち向かう勇気がくじかれているのです。褒められることによって、人は能力がないという信念を形成していくのです。

共同体感覚

共同体感覚とは「相手の喜びを自分の喜びとすること」であり「他者への協力の能力とそれへの準備」であると言われます。

アドラー心理学の中核概念です。

「あらゆる失敗は、共同体感覚の欠如にある。協力する能力が低いから失敗するのだ」とアドラーはいいます。

まとめ

元祖・自己啓発、アルフレッドアドラーは、劣等感解放の大家でした。

アドラーは、常に問題解決により、人と社会の調和とそを考えていたことが最大の特徴です。

繰り出すワザは大変に多彩です。

最後に、劣等感から解放するのは勇気であり、劣等感から解放された人がどうなるのか?アドラーの言葉をご紹介してこのエントリーを締めくくります。

勇気がある人は、社会と調和している。

自分らしく好きなことをしながら、ごく自然に社会の役に立っている。

「アルフレッド・アドラー 人生を変える100の言葉」より

「アドラー心理学とは何か?魅力をかんたんに分かりく解説」

※参考書籍

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