この記事では、実際の相談者さんとのディスカッションを通じて、アドラー心理学の目的論をどんな風に人生に役立たせられるのかを実証していきます。
否定的な意見や、実践が難しいという意見も多いアドラー心理学ですが、「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」が多くの人々に広がったという事実のとおり、やはり勇気を与える力は大きいものがあります。
DISCUSSION 誰かを愛さないと幸せになれないのでしょうか。
質問者:
あまり、人を愛したことがありません。誰かを愛さないと幸せになれないのでしょうか。
いつも相手にとって最良な接し方は何だろうかとばかり考えるので、疲れるため常に一人です。
しかしそれが上手く伝わっていないので、向こうから近寄ってくることもない。察することは出来るものの愛情が足りないので、いつも何かと合理的になってしまうところがあります。
ただ、内心「誰かに認めて貰えたらいいのにな」と思う自分が見え隠れする。
こんなことは良くあることと知りながら、親が恐ろしい、他人が恐ろしいと感じて震えて育ってきた人間の場合はどうやって愛をみつけていくのだろう、という疑問を感じました。
人が自分から何かを奪っていくのではないか、という思考癖が子供の頃にあって、それが今疼いて虚しくなります。
臭い質問ですみません。
コウノ:
確かに、過去の経験には縛られます。そういう人もたくさん見受けます。だけれど、不思議なことに、そうではない人たちも沢山います。
特に、成功者とか、偉人みたいに呼ばれる人とか、普通の人でも平気で幸せを語れる人にこそ、酷い挫折経験があったりします。
つまり、毒にもなるし、薬にもなるのがトラウマなんじゃないかって思う訳です。
既に、経験してしまった過去ですが、実はこれを自分がどう解釈するかという、主観の問題なんだろうな、と薄々気が付くわけです。
きっと過去を言い訳にして、そういう人生だと意味づけした方がお得じゃないのか?という浅はかな目論見が見事に外れているんだろうな、もし今の自分が苦しいのなら。
そんな風に思うんですね。
思えば、どんな凶悪犯も、幼い子供のころから凶悪犯になろうとは思っていなかったでしょう。きっといろいろあってその人なりの事情と理由でそれを自分が選んだんだろうなと。
もちろん選択の重大なミスは犯しているわけですが。
だとすると、自分のあり方を選び直さないといけないよね。たぶんですが、これまでも自分の判断で選びとってここまできたわけですから、これからも選び取れる、と思うのです。
勇気をもって、選び直してみませんか?いいたかったのはそれだけです。長くてすいません。
質問者:
とんでもありません…こんな自己憐憫みたいな質問に、丁重に対応してくださって感謝の言葉もありません。
そうなんですね、結局過去が凄惨あったとしても、その先の未来で何を掴むか、何を選ぶのかは常に自由があって、例えそれが今の私のように不満を抱えていたとしてもそれは私が決めたこと。
優劣はあれど処世術は全員持っていて、自分で選択している。以前私はこれが難しくて、自己憐憫に浸っていました。
貴方がおっしゃる通り、今私には「選び直す」という節目を迎えているのかもしれません。
今私の周囲に1人も親しい方が居なくなった、愛する対象が無くなった、という現状は、愛さないようにしようとした過去の自分の望みが、成就していたのだろうと思いました…。
どこかで愛さなくても済むような環境を無意識のうちに作っていたのが否めなくてゾッとしました。
「望み」がなんなのか、今1度過去を精算して考え直してみます…
アドラー心理学目的論の実践
目的論を端的に言えば、あなたに起きている問題に原因はないの。あるのはあなたの目的なの。仕方なく起きたているのではなくて、あなたが起こしたくて起きているの。という理論です。なんとも一見残虐です。だから、アドラー心理学には、賛否があります。
「トラウマは確かにあるにきまっている」
といって否定する意見をよく耳にします。そして、私も気持ちは分かります。どうしても酷なのは、人を愛せないと悩んでいる人に、その悪行はあなたたが選んでいます、以上。では、取り付く島もないところです。
でも、本をちゃん読みましょう。
目的論を紹介した後で、すぐに、ライフスタイルを選び直せるんだよ、という話が続くわけです。抗えないと思っていた自分の性格も、目的を持てば、変えられるという前向きな話があるわけです。これからの話無しに、悩みが解決するわけがありません。
質問者の彼女は、子どもの頃からの思考癖が今に影響していると考えていました。つまり、彼女は過去に抗えないでいると言っていたわけです。
そこへ、悩んでいる理由は、過去の原因ではなく、今の目的にあるのではないか?そして、今までの目的で選び取ってきたものなのだから、これからも選び取れるのではないか?という話をしました。
それが、明晰な彼女にはスッと入ってしまったようです。
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