人間関係で悩んでいる人が多いですね。また、あらゆる悩みを元をたどれば人間関係に由来するというのが、アドラー心理学の考え方です。
私は、約30年広告営業を生業にしている今は経営者ですが、業界的にも業種としても、ここでは全てが人間関係です。
この記事では、アドラー心理学に基づいて、人間関係の悩みについて解説していきます。
職場にみる人間関係の悩みの現状
人間関係の悩みの現状
以下は、転職支援サービスの「エン転職」が職場の人間関係について調査した結果です。如何に多くの人が人間関係の悩みを抱えているかが分かります。
- 「今までの職場で、人間関係に難しさを感じたことはありますか?」と伺ったところ、84%の方が「ある」と回答しました。
- 「誰との人間関係に難しさを感じましたか?」と伺うと、「先輩」(39%)が最多でした。次いで「同僚」(22%)、「直属の上司」(14%)が続きます。
- 年代別に見ると、20代は「同僚」(20代:29%、30代以上:18%)、30代は「直属の上司」(同10%、17%) 、「後輩」(同6%、13%)が目立ちます。
- 「直属の上司・先輩・経営層」との人間関係に難しさを感じた方に理由を伺ったところ、トップ3は「威圧的に感じる」(50%)、「気分に浮き沈みがある」(48%)、「指示に一貫性がない」(44%)でした。
- 「同僚・後輩・非正規社員」との人間関係に難しさを感じた方に理由を伺ったところ、トップ3は「不平不満が多い」(41%)、「自分の意見や考えに固執する」(37%)、「人柄が信頼できない」(34%)でした。
※出典:1万人に聞く「職場の人間関係」意識調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート―| 2018年8月29日~9月25日
人間関係のあるべき姿と課題の整理
人間関係のあるべき姿
「威圧的に感じる」「気分に浮き沈みがある」「指示に一貫性がない」「不平不満が多い」「自分の意見や考えに固執する」「人柄が信頼できない」
このようにさまざまな人間関係の悩みを見てみると、仕事の能力や成果に関することよりも、関係者の人間性に対する悩みが目立ちます。
原則として仕事は、その人へ分業された仕事に対する遂行能力で実現されていきます。こういった機能価値の世界では、人との比較、上下優劣、条件付で評価しあう、縦の関係になります。ここには、永遠に競争原理が働いていく、タフでクールな世界です。
つまり、この縦の関係だけでは、お互いの機能価値の高低に一喜一憂し合い、常にお互いがお互いの感情を揺るがす関係になっていきます。競争原理の中で、お互いの切磋琢磨がプラスに働けばいいのですが、実際それだけでは、人に厳しく仕事に厳しい軍隊のような組織になってしまいます。
そこで、組織の機能価値の向上のためにも、メンバー同士が人として信頼し合い存在価値を尊重し合う態度が必要になります。存在価値を認めることができる横の関係の組織は、人間関係の土台がしっかりしているので、些細なことで揺らぐことがありません。
ドラー心理学では、このお互いの存在価値を認めあう感覚を「共同体感覚」と呼びます。また、これに必要な態度、つまり、欠点も含めたありのままの自分を認めることを「自己受容」といい、他者を無条件で信じることの重要性を「他者信頼」という言葉を使って解いています。
※「自己受容」の関連記事:「自己受容できない人の特徴と原因、有効な対策と評価」
※「他者信頼」の関連記事:「信頼関係を築くには?信頼の意味と関係の築き方」
人間関係の悩みの課題の整理
自分が気に入らない他者の態度を改めさせる権限は私たちにはありません。他者が人にどういう態度で望むかについては、抗えない他者の課題です。
わたしたちが取り組める自らの課題は、私たちがゆるぎなく横の関係を貫く態度をとることです。そのためには、人間の存在価値を尊重し、信頼を築くことです。
わたしたちがあるべきだと考える、人の存在価値をベースにした仕事の関係性をわたしたちから働きかけることが必要です。
人間関係の悩みの本当の理由
先輩や上司の「威圧的に感じる」「気分に浮き沈みがある」「指示に一貫性がない」態度や、同僚の「不平不満が多い」「自分の意見や考えに固執する」「人柄が信頼できない」態度が悩ましいのはどうしてか?
もし、人間は威圧的に振舞うのも良くあることだと思っていたら、あるいは、気分の浮き沈みがあるのが普通だと思っていたら、特別な感情を持ち、悩むことはりません。
つまり、威圧感を与えるような態度をとるべきでないというのが、自分の理想であり、相手は自分の理想像もしくは執着から外れているわけです。
そして、自分の理想から外れている相手を許していない、というのがこれら悩みの構造です。
人間関係の悩みの解決法
人間関係の悩みの解決法の基本は、以下の2つです。
解決法1:許す
コミュニティでは、様々な個性や考えや事情を抱えながら人々が協力し合います。そのことを踏まえて、相手を許す、自分の執着を手放すことも必要です。
解決法2:許さない
どうしても、自分の心情に合わないということ当然あります。あなたの人生はあなたのためにあります。許さないのであれば、その相手とは距離を取るべきです。最低限の関わりに抑えるところから、職場を離れてしまうところまで、適切な距離感を選びましょう。
世の中にはいろんな人がいます。許すか距離を取るかのどちらを選ぶにしても、相手の性格や考えや事情に興味をもって、話を聞く機会は必ず作りたいですね。
まとめ
多くの人は、職場においても、仕事の能力だけでなく、人間性を尊重し合うべきだと思っています。
そこで、お互いを尊重するためにも、相手の課題と自分の課題はくっきり分けたいところです。
時に、他者の態度や行動を不快に感じることがあります。これは、他者が自分の理想(執着)から外れていることを許していないせいです。
「人間関係のあるべき姿と課題の整理」
※参考文献
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